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「トリアンギュレン」の作製に初めて成功: Nature Nanotechnology誌

スイスのIBM Researchと英ウォーリック大学の共同研究の成果として、非ケクレ分子であるトリアンギュレン (triangulene) の作製に世界で初めて成功したとする論文が、Nature Nanotechnology誌に掲載されています。

トリアンギュレンは、1953年にチェコの化学者Erich Clarが理論的な存在可能性を指摘して以来、長年にわたって合成の試みが行われてきた炭素分子です。2011年には大阪市立大学のグループが誘導体である臭化トリオキソトリアンギュレンの合成をNature Chemistry誌に報告していますが、単体での合成はこれまで成功例が報告されていませんでした。

今回の研究では、不対電子を含まないジヒドロトリアンギュレン分子を金属基板上に配置し、STM/AFM (STMとAFMの技術を組み合わせた顕微鏡) を用いて電子を引き剥がすという力技でトリアンギュレンを作製しています。IBMのリリースに記載されている具体的なテクニックについては以下の通り。

In their latest research the sharp tip of the combined STM/AFM was used to remove two hydrogen atoms from the precursor molecule. The STM takes its measurement by quantum mechanical tunneling of electrons between a tip brought very close to a sample surface and applying a voltage between them. At appropriately high voltage, the ‘tunneling electrons’ can induce the removal of the specific bonds within the precursor molecule. 

STMのチップ先端と分子の間で高電圧のトンネル電流を発生させることで電子を吹き飛ばした、というような事が書かれています。装置のセットアップ詳細については言及されていませんが、IBM Researchでは2009年にAFMのカンチレバー先端にCO(一酸化炭素分子)を吸着させることで原子分解能を実現する技術を開発しており、この時の知見が今回の実験でも活用されているそうです。

2009年の成果に関する日本語記事は以下が参考になります。
顕微鏡で有機分子の形が見えた!(Chem-station)

トリアンギュレンは、基底三重項と呼ばれる特殊な状態をとっている分子で、有機エレクトロニクスや量子コンピューターなどの分野への応用展開が期待されています。常温では極めて不安定ですが、今回の論文では低温真空中の銅基板上で数日にわたって保持できることも確認されているとのことです。

研究グループでは、今後はより詳しい物性解明を進めていくとしています。

This article is based on
Synthesis and characterization of triangulene
(Nature Nanotechnology)
via
Triangulene, By Force (Science Translational Medicine)
Researchers use new approach to create triangulene molecule (Phys.org)
Scientists finally make ‘triangulene,’ which is good, we think (Extremetech)

Press IBM & Warwick Image Highly Reactive Triangular Molecule for the First Time  (IBM Research)

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