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適度な断食によってすい臓の機能が再生(マウス&ヒト細胞) : Cell誌

半断食(ファスティング)状態に置いたマウスとヒトの細胞において、すい臓の機能再生が促進されるという研究結果が南カリフォルニア大学のグループから発表されています。人間で同様の効果が認められれば、糖尿病をはじめとする成人病の治療に大きな変革を起こすことになるかもしれません。

近年、適切な指導のもとに行われる軽度の断食行為には、免疫機能や認知機能などの面で様々な健康効果があることが明らかになってきています。

今回の論文の責任著者でもあるValter Longo氏のグループは、2015年に標準カロリーの3割から5割ほどに制限した食事を1ヶ月に5日与えたマウスにおいて免疫機能の恒常や寿命延長といった効果が見られたほか、人間のボランティアを使ったテストでも糖尿病の発症やがんの成長に重要な役割を果たす「インスリン様成長因子1(IGF-1)」のレベルが低下したと報告しています

民間向けの情報という観点では、例えば、全米でも最難関の医学部を擁するジョンズ・ホプキンス大学が運営する健康レビューサイトでは、週に数日程度のファスティングによってアルツハイマーやパーキンソン病と行った神経疾患を「予防 (原文:ward off)」することが出来るとしたMark Mattson教授の研究を紹介しており、スタンフォード大学やハーバード大学のサイトでもファスティングに関するQ&Aコンテンツなどを掲載しています

本研究とは別に、ファスティングとIGF-1との関連を調べたLongoグループの続報がScience Translational Medicineの2月号に載っていたのでリンクだけ置いておきます。
http://stm.sciencemag.org/content/9/377/eaai8700

今回Cell誌に発表された研究は、まず1型および2型糖尿病のモデルマウスを「fasting mimicking diet(FMD)」と呼ばれる食事管理環境に置き、健康への影響を調べています。具体的には、1日目は標準カロリーの50%を、2日目から4日目にかけては標準カロリーの10%の食事を投与。その後の10日間は標準的なカロリー量の食事を与えて、このサイクルを3回行なっています。

その結果、通常であれば胎児期のマウスでのみ見られるNeurogenin3と呼ばれる転写因子(タンパク質の一種) の発現が起こり、すい臓内のβ細胞が新しく生成されていることが確認されました。これによって1型および2型の糖尿病マウスはともに血糖値が安定し、症状が軽減したとのことです。

さらに、1型糖尿病の患者から採取したすい臓の細胞を使用した実験においても、マウス実験と同様にNgn3の発現が起こり、インスリンの産生回復が確認されたと報告しています。

糖尿病は、すい臓がほとんど自然再生しない臓器であることから、根治が困難な病気として知られています。近年では細胞移植による次世代治療の研究も行われていますが、拒絶反応の問題や高額な費用などによって、普及にはまだまだ時間がかかると見られます。

もちろん医師の指導が前提でのことではありますが、今後の研究の進展によっては、糖尿病治療における患者の身体的・経済的負担を大幅に減らすことが可能になるかもしれません。

This article is based on:
Fasting-Mimicking Diet Promotes Ngn3-Driven β-Cell Regeneration to Reverse Diabetes
via
Fasting diet ‘regenerates diabetic pancreas’ (BBC News)
A fasting-diet may trigger regeneration of a diabetic pancreas (Ars technica)

Image Credit: pelambung / Pixabay

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