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米国初のヒト受精卵に対するゲノム編集、MIT Tech Reviewが伝える

MIT Technology Reviewは26日、欧米諸国では初となるヒト受精卵の遺伝子編集が行われ、近日中に論文が発表される見込みであると伝えています。

オレゴン健康科学大学のShoukhrat Mitalipovらよる今回の実験は、今年2月に米国科学アカデミー(National Academy of Sciences, NAS)と米国医学アカデミー(National Academy of Medicine, NAM)が発表した、特定の条件下においてヒト受精卵の改変を容認するとした報告書に基づいたもの。

ゲノム編集のヒト受精卵応用を米学術2機関が条件付容認 道筋示し各国内議論に影響
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/review/2017/02/20170216_01.html

ヒト受精卵に対する遺伝子編集は現在までに中国で3例が行われており、いずれもCRISPRと呼ばれる遺伝子編集技術が用いられています。今回のケースについても(論文発表前のために実験手法や結果の詳細は得られていないとのことですが)研究に近しい人物からのコメントとして「CRISPRの技術が用いられており、編集状態の細胞と未編集状態の細胞が入り交じりながら細胞分裂が進む “モザイク”の問題を有意に低減出来ている」と伝えています。

正常な受精卵(細胞分裂が進むことで胎児への成長が可能な卵)を用いた遺伝子編集は、2015年に中国が世界初の研究論文を発表したことをきっかけに多くの注目を集めていますが、一方で実験のガイドラインや法令面での整備などは国ごとに異なっている状況です。

 

参考までに、中国のチームによって発表されている3報の出典と概要は以下の通り。

CRISPR/Cas9-mediated gene editing in human tripronuclear zygotes
(Protein & Cell: May 2015, Volume 6, Issue 5, pp 363–372)

不妊治療クリニックから提供された、複数の精子を受精したことで出産に繋がる可能性が極めて低い受精卵86個に対し遺伝子編集を実施。βサラセミアという重度の貧血症の原因となるβグロビン遺伝子の修復を試みたが、最終的に思い通りの編集がなされていた受精卵は4個のみであったことに加え、狙った場所とは異なる部分で変異が生じる「オフターゲット」や(前述した)「モザイク」と呼ばれる現象が確認された。

Introducing precise genetic modifications into human 3PN embryos by CRISPR/Cas-mediated genome editing
(Journal of Assisted Reproduction and Genetics: May 2016, Volume 33, Issue 5, pp 581–588)

1報目と同じく、出産可能性が極めて低い受精卵が対象。「CCR5」という遺伝子の変異体である「CCR5Δ」はHIV抵抗性に深く関係していることが知られているが、この論文ではCRISPRを用いてその変異を人為的に誘導する試みが行われた。実験を行なった26個のうち4個が編集効果が確認されたが、不完全な変異が含まれていた他、この時もオフターゲットやモザイクが多く確認された。

CRISPR/Cas9-mediated gene editing in human zygotes using Cas9 protein
(Molecular Genetics and Genomics: June 2017, Volume 292, Issue 3, pp 525–533)

正常な受精卵を対象とした、初めての報告。不妊治療で余り廃棄予定であった受精卵6個に対して遺伝子編集を行なった。オフターゲットは確認されなかったが、編集効果が確認された3個の卵のうち、2個でモザイクが発生した。

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