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史上初の合成が報告された金属水素、保管中のサンプルが「消失」

2017年最初の科学ブレークスルーとして大きな注目を集めたハーバード大学の研究グループによる「金属水素」の合成ですが、英紙Independentが、世界で唯一の存在であったこの貴重なサンプルが手違いにより消失したと伝えています。

金属水素(metallic hydrogen)は水素が超高圧下において金属状に変化した物質で、1935年に物理学者Eugene Paul WignerとHillard Bell Huntingtonが理論的に存在可能性を示して以来、およそ80年にわたって合成研究が行われてきました。

2017年1月、ハーバード大学のRanga P. Dias氏とIsaac F. Silvera氏が、5.5K (-268℃)・495GPaの高圧超低温下において金属光沢を示す水素の合成に成功したとする論文をScience誌に報告しています。

Observation of the Wigner-Huntington transition to metallic hydrogen
http://science.sciencemag.org/content/early/2017/01/25/science.aal1579

金属水素は理論的に超伝導性を持つことが指摘されていることから、研究が進むことで金属状態を比較的温和な条件下で維持することが可能になれば、材料科学やエネルギー工学の分野において大きな革命をもたらすものと考えられています。

Independentの記事によると、作製した金属水素のサンプルは高圧状態を維持したダイヤモンドアンビルセルで保管されていたものの、低出力レーザーを使った圧力測定の際の手違いにより「消失(disapper)」してしまったとのこと。Silvera氏は、アンビルセルから「パキッ(click)」という音がしてダイヤが砕けたため試料は四散してしまったか準安定(meta-stable)状態から気体に戻っただろうと説明しています。

そもそもの合成に関する疑義も

高圧物理学の分野における80年来の悲願達成とされたSilvera氏らの成果ですが、発表当初から金属水素の生成について疑問の声も挙がっていました。

Physicists doubt bold report of metallic hydrogen (Nature News)
http://www.nature.com/news/physicists-doubt-bold-report-of-metallic-hydrogen-1.21379

There’s Reason To Be Skeptical About Metallic Hydrogen (Forbes)
https://www.forbes.com/sites/samlemonick/2017/01/27/theres-reason-to-be-skeptical-about-metallic-hydrogen/

Doubt cast on claims Harvard scientists created ‘metal hydrogen’ (Metro)
http://metro.co.uk/2017/01/28/doubt-cast-on-claims-harvard-scientists-created-metal-hydrogen-6411482/

疑義の大まかな内容としては、Wignerらの論文では金属水素であることを示すデータが単一の反射率測定に基づくもので、再現性も取られておらず、例えば観察された金属光沢が圧力付加に使用されたダイヤモンドアンビルセルのアルミナコートが剥がれたものである可能性を排除できないというものです。

現在、研究グループでは再現実験の準備を進めているとのことです。

This article is based on:
World’s only piece of a metal that could revolutionise technology has disappeared, scientists reveal

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