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第6の味覚「水味」には酸味を司る味細胞が関与: nature neuroscience誌

人間をはじめとする多くの生物は、一定期間にわたって水を摂取しない状態が続くと生命維持に支障をきたします。そのため「①必要な時に必要な量だけ水分を摂取するための仕組み」「②水分の摂取が行われていることを感知する仕組み」が必要不可欠です(実際には①②のように明確に区別出来るものではありませんが、便宜的にこのようにしています)。

甘味や塩味の飲食物と異なり、水は無味無臭の液体ですが、口の中に水が入るとはっきりとそれであると認識できます。しかし、なぜ「水の味」を感じることが出来るのかということについては、長らく議論が続いていました。

先に上げた①②の仕組みの内、「①必要な時に必要な量だけ水分を摂取するための仕組み」については、近年の研究によってメカニズムの一部が明らかになってきています。例えば2014年には、水を飲むことで脳の前帯状皮質 (anterior cingulate cortex) や眼窩前頭皮質 (orbitofrontal cortex) が特異的に反応することを示した論文が発表されており、また、2016年には視床下部に存在する一部のニューロンが、水分不足による「渇き」に対する予期的な行動を司っているとした論文をNature誌に報告しています。

飲食中には、口腔からSFO(脳室周囲にある3つの感覚器官のうちの1つ)へのフィードバックが、血液組成に関する情報と統合され、これにより体液バランスが経口摂取によってどの程度変化しそうかについての指標がもたらされて、行動が調節される。

予期的渇きを引き起こす神経回路 (Nature Japan)

しかし、これまでの研究から、動物は腸内の水分量や血液濃度などから「もう十分だ」というシグナルが脳に返るよりもはるか以前に水を飲むのを止めることがわかっており、より迅速かつ直接的に「②水分の摂取が行われていることを感知する仕組み」が口腔内や舌に備わっているものと考えられていました。

http://www.mac.or.jp/mail/101201/03.shtml

動物や人間の舌の表面には、味蕾(みらい)と呼ばれる花のつぼみのような感覚器があり、その内部には味細胞(Taste Receptor Cells, TRCs)と呼ばれる細胞が存在しています。口腔内に入った食物や液体の味は、これらの味細胞を通じて電気信号に変換され、脳に伝えられます。

今回発表されたOka Yuki氏らによる論文では、このTRCsが水の感知に直接的に関わっている可能性を示したものとなります。

Oka氏らはまず、遺伝子改良によって舌の表面に存在する様々な種類のTRCsをノックアウトしたマウスに水を与えることで、どの細胞が水に対して反応しているかを調べています。その結果、酸味を司る味細胞が欠落したマウスでは、水と無味のシリコンオイルを区別するのに長い時間を要する結果となったことから、このTRCsが水の判別に関与している可能性が高いことが示されました。

続いて、この酸味のTRCs中に光に反応するタンパク質を発現するよう改良したマウスと、比較対象となる非改良マウスに対して、ケージ内に設置された注ぎ口から水を飲むようにトレーニングを実施。その後、注ぎ口の代わりに青い光を放つ光ファイバーを設置したところ、改良されたマウスでは、非改良マウスに比べて光ファイバーの発光部を10分間に1000倍の頻度で舐めていたとのことです。

酸味を司る味細胞がどのように水の存在を感知しているのか、その詳細なメカニズムについては明らかになっていませんが、Oka氏は、水が唾液を希釈することによって起こる細胞内のpH変化が関係しているのではないかとしています。

This article is based on:
The cellular mechanism for water detection in the mammalian taste system
(nature neuroscience)
via
Scientists discover a sixth sense on the tongue—for water (Science)

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