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肺に血小板の生産能、全身の50%相当 その他の幹細胞も: Nature誌

体表面や体内で出血が起こった際に血液を凝固させて出血を止める役割を果たしている血小板(platelets)は、その大部分が骨髄中で作られていると考えられていましたが、実際には肺の中で全身量の半分近くが生産されていることが明らかになったとする論文が、Nature誌に掲載されています。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究グループは、独自に開発した2光子励起顕微鏡 (two-photon intravital imaging) を用いて血小板が蛍光を示すように遺伝子組み換えを施したマウスの肺内部を観察していたところ、巨核球(megakaryocytes)と呼ばれる血小板を生み出す細胞が非常に多く存在していることを発見。

巨核球の一部が肺に存在している事自体は以前から知られていましたが、詳細な観察の結果、マウスの肺の巨核球は全身に存在する血小板のほぼ半分に相当する量 (1時間あたり1000万個) を生産していたと報告しています。さらに、巨核球の “もと” になる巨核球前駆細胞や、その他の血液幹細胞が、一つの肺の中に100万個単位で存在していることも確認されました。

▼血小板を放出しながら肺の血管を移動する巨核球。

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論文では、肺の移植手術をした場合の影響についても報告しています。

健常マウスの肺を、巨核球が蛍光を示すように改良されたマウスに移植したところ、移植後に血管内の蛍光数(=巨核球の数)が増加。また、巨核球前駆細胞を含む肺を、血小板数が低い変異マウスに移植した場合では、移植先のマウスの血小板数が劇的に増加して通常の水準に回復していたとのことです。

巨核球の寿命は10日程度ですが、数ヶ月にわたる観察期間中にわたってこの回復効果は維持されていたことから、移植された肺の中の巨核球前駆細胞が巨核球に成長することで、変異マウスの血小板生産量を引き上げたものと考えられます。

さらに、骨髄中で血液幹細胞を生産する能力を失ったマウスに健康な肺を移植したケースでは、肺の中で作られた血小板や好中球、B細胞、T細胞など多岐にわたる細胞が骨髄へと移動して血液の生産に寄与していることが確認されています。

論文のシニアオーサーであるMark R. Looney教授は「今回の発見は、肺が呼吸機能だけではなく、血液生産の観点からも非常に重要な役割を果たしているという、これまで考えられていたよりも精巧な一面を示唆するものだ」と語っています。

肺の主な機能は呼吸にあり、造血機能についてはサブ的な役割を果たしているものだとするこれまでの考えを大きく変える内容ですが、今後研究が進むことで、炎症やがんなどによる肺の機能低下が血液生産に及ぼす影響などについても新たな知見が得られるかもしれません。

This article is based on:
The lung is a site of platelet biogenesis and a reservoir for haematopoietic progenitors (Nature)
via
Surprising new role for lungs—making blood (Medicalpress)
Unexpected new lung function discovered: Making blood (New Atlas)

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