がんの転移は初期ステージから始まっている :Cell Reports誌

がんの厄介な性質に、元々発生した場所から「転移 (metastasis)」することがあります。検査で見つかったがんを治療し終えたところで別の臓器から新たながんが見つかる、ということは全く珍しいことではありません。
これまで、がんの転移は症状が進行した末期の段階で起こるものとされていましたが、実はごく初期の段階でがん転移のプロセスは始まっているとした研究結果が、米スクリプス研究所のグループによって発表されています。
がんの転移は、元々の発生場所(原発巣)で成長したがん組織が血管を侵食し、そこからがん細胞が血流に乗って全身に広がることで起こります。そうした転移は、がんの進行度を示す「ステージ0」から「ステージⅣ」の5段階のうち、がんの成長が進んだステージⅢにおいて、がん組織が正常組織を侵食している境界部分(invasive edge)から起こるというのが、これまでの定説でした。
しかし今回の研究では、ヒト腫瘍細胞をマウスに移植した実験によって、検査などでがんが検出されないようなごく初期段階のがん中心部 (tumor core) から、がん細胞が血流に入り込むことで全身に拡散し得ることが示されています。
▼がんの血管内侵入 (intravasation) を示すモデル。左が従来のもの、右が今回の研究結果。

Elena I. Deryugina
論文では、蛍光標識されたがん組織内の全ての血管を3Dモデル化することで、invasive edgeよりもtumor coreにおいてがん細胞の侵入が起こっていることを可視化しており、また、こうした血管内侵入に関して「上皮成長因子受容体 (Epidermal Growth Factor Receptor, EFGR)」 というタンパク質が重要な指標となると述べられてます。
グループでは今後、tumor core内に存在している様々な種類の細胞について、機能的な解明を進めるとしています。
This article is based on:
Intratumoral Cancer Cell Intravasation Can Occur Independent of Invasion into the Adjacent Stroma (Cell Reports)
via
At last, a clue to where cancer metastases are born (Medicalpress)
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