1. TOP
  2. 科学全般
  3. Breakthrough of the Year: Science誌が選ぶ2019年の革新的研究と9つの重要成果

Breakthrough of the Year: Science誌が選ぶ2019年の革新的研究と9つの重要成果

科学誌Scienceが1年間でもっとも革新的と評価した研究成果に贈る “Breakthrough of the Year” と9つの重要成果(Runners-Up)が今年も発表されました。2010年代最後の年にふさわしく、様々な分野から革新的な研究成果がリストアップされています。

2019 Breakthrough of the Year
https://vis.sciencemag.org/breakthrough2019/finalists/

本記事では、これら10個の研究成果について、簡単に解説していこうと思います。

▼昨年以前のBreakthrough of the Yearはこちら
https://meridia.tech/tag/breakthrough-of-the-year/

Breakthrough of the Year

2019年のBreakthrough of the Yearに選ばれたのは、イベント・ホライズン・テレスコープ(Event Horizon Telescope, 以降EHT)による、おとめ座M87銀河の中心にあるブラックホールの直接観測でした。これは人類史上初めてブラックホール「本体」の観測に成功したケースとなり、まさに天文学史に残る偉業といえます。

Credit: EHT Collaboration

M87銀河は地球から5500万光年という非常に離れた場所にあり、その中心に太陽の65億倍という超大質量をもつブラックホールがあります。M87自体は1781年にすでに発見されていましたが、中心部にブラックホールがあると判明したのは1994年のハッブル宇宙望遠鏡による観測がきっかけでした。

およそ20年以上にわたってM87は天文学における重要な観測対象となっていましたが、ブラックホール自体の観測はこれまで一度も行われていません。その理由は、ブラックホールの「大きさ」と「極めて大きな重力」にあります。

ブラックホールは巨大な質量の天体ですが、その大きさは比較的コンパクトです。例えば、太陽を1cmくらいのボールにギュッと圧縮するようなことを考えてみてください。地球からからそのボールを観察しようとすると、非常に高性能な望遠鏡が必要になることは容易に想像できるのではないでしょうか。M86それ自体は巨大な銀河ですが、地球からの距離があまりにも離れすぎているため、詳細な観測を行うためには極めて高性能な望遠鏡が必要です。

また、ブラックホールは、光さえ脱出できないほどの想像を絶する重力を持っています。当然、地球にも光は届かないため撮影のしようがありません。「周りに星の光がある中になんか暗い部分がある」程度の観測はできますが、それでは詳細な解析をすることができません。

ブラックホール自体は光を発しませんが、ブラックホール周辺にある高温のガスや宇宙塵が様々な波長の電磁波を放出しながら輝くため、それら 電磁波信号を検出・画像化することで輪郭部が明るい穴の姿(ブラックホールシャドウ)を浮かびあがらせることが可能になります。

こうした課題を解決するために、EHTでは光よりも直進性の高い「ミリ波」という電磁波を、超長基線電波干渉計(Very Long Baseline Interferometry, VLBI)という技術で観測しました。

VLBIは、極めて精密な時計でタイミングを合わせながら複数地点において同時撮影した像をコンピューターで繋ぎ合わせて一枚の巨大な撮影像を生成します。EHTでは、以下の画像のように世界8箇所の電波望遠鏡で撮影した画像を「相関器」と呼ばれるスーパーコンピューターでつなぎ合わせ、あたかも地球規模の超巨大望遠鏡で撮影したような観測を行いました。

歴史に残る偉業を達成したEHTですが、課題も残っています。下の画像はハッブル宇宙望遠鏡が可視光観測したM87の画像ですが、中心部から何やらリボンのようなものが出ていることがわかります。

これは「宇宙ジェット」と呼ばれるプラズマ流で、M87銀河の中心部からおよそ5000光年という極めて長距離にわたって光速に近い速度のガスが噴出しています。しかし、その発生メカニズムについてはまだほとんど明らかになっていません。

M87は1918年に宇宙ジェットが史上初めて観測された天体でもありますが、今回のEHTのブラックホール観測では宇宙ジェットはとらえられていませんでした。

EHTプロジェクトでは、2020年内にグリーンランドや米アリゾナの天文台を含む新たな11の観測拠点が追加されると発表しています。また、観測波長もこれまでの波長1.3ミリから0.86ミリに変更されるとのことで、これまで以上に高い解像度での観測が可能になるものと思われます。EHTの性能が向上することで、今回観測されなかった宇宙ジェットも確認できるようになるかもしれません。

(※)文中の画像でクレジット表記のないものは全て国立天文台学のプレスキットより引用しています

<References>
史上初、ブラックホールの撮影に成功 ― 地球サイズの電波望遠鏡で、楕円銀河M87に潜む巨大ブラックホールに迫る
https://www.nao.ac.jp/news/science/2019/20190410-eht.html

Runners-up

以下は、Breakthrough of the Yearの候補に挙がっていた9つの重要な科学的発見になります。

史上 2例目の「デニソワ人」発見、DNA解析も

Credit: Maayan Harel

ネアンデルタール人、現生人類(ホモ・サピエンス)に次ぐ「第3の人類」として近年研究が進められているデニソワ人。2008年にロシア・アルタイ山脈のデニソワ洞窟から最初の遺骨が発掘されたことにちなんで名付けられた彼らについて分かっていることは、まだ多くありません。

2018年には、デニソワ洞窟で後に発見された別の遺骨が、ネアンデルタール人とデニソワ人との遺伝的特徴をほぼ同じだけそなえた子どもであることが判明。ネアンデルタール人とデニソワ人との間にできた最初(第一世代)の子どもが確認されたという、驚くべき研究成果でした。

最初の遺骨が発見されてからおよそ10年間、デニソワ人の痕跡はデニソワ洞窟以外では見つかっていませんでしたが、2019年5月に史上2例目となる発見報告がNature誌に掲載されました。

新たにデニソワ人のものと同定された骨は、1980年にチベット自治区の夏川県にあるBaishiya Karst Cave (中国語表記は「白石崖溶洞」) という洞窟の中で発見されたもの。最近になって中国とドイツの共同研究グループが骨から抽出したタンパク質を解析した結果、デニソワ人の骨であることが判明しました。

デニソワ人のDNAは、現代のアジア人やオセアニア人などにも受け継がれていることが確認されており、非常に広大な地域にわたって分布していたと考えられています。今回新たに骨が発掘されたチベットの洞窟はデニソワ洞窟からおよそ2300kmも離れた場所にありますが、まさにデニソワ人の広大な地域分布を裏付ける証拠といえるでしょう。

2019年9月には、ヘブライ大学の研究グループが、DNA解析によってデニソワ洞窟で発見されたデニソワ人の姿を復元。広い骨盤や傾斜のある前頭部、突き出た下顎といった特徴から外見は比較的にネアンデルタール人に近いものの、幅の広い頭部など現生人類やネアンデルタール人と異なる特徴を備えていることもわかりました。

 

量子超越性(が達成された可能性)

2019年10月、計算機科学史における一大転換点になるかもしれない論文がNature誌に掲載されました。米Goolgeの量子コンピューターが「量子超越性(Quatum Supremacy)」を達成したとする論文です。

既存のスマートフォンやパソコン、スーパーコンピューターといったいわゆる「古典的コンピューター」に搭載されているプロセッサが0と1のいずれかの状態を「ビット」という単位で管理・表現しているのに対して、量子コンピューターは0と1が同時に存在し得る「キュビット(量子ビット)」という単位で情報を扱います。

0と1のいずれかの値を片方ずつを扱う手法と同時に2つの値を表現する手法では、後者の方がより多くの情報を処理できそうなことは直観的にも想像できます。そのため、量子コンピューターが実現すれば、理論上は古典的コンピューターの限界を上回る性能を発揮することが可能と考えられています。

量子超越性とは、この量子コンピューターが特定の問題解決において古典的コンピューターを上回ることを示す言葉。ここで重要なのは、あらゆる種類の問題において解決スピードが上回る必要はなく、なにか一つでも量子コンピューターが優れていることを実証できれば、それは量子超越性を達成したということになります。

Googleの論文では、ランダム量子回路サンプリングという特殊な問題の計算に要する時間を、既存のスーパーコンピューターと同社が開発した量子プロセッサ “Sycamore” を搭載した量子コンピューターとで比較。その結果、数兆〜数京という莫大な数の計算素子を搭載した既存コンピューターでは問題解決に1万年が必要としたのに対して、量子コンピューターはわずか53キュビット=53個の計算素子によって200秒で解決することができたと報告しています。

この報告に対して、米IBMはGoogleの論文が公開された直後にブログ上で反論。論文上で現在のスーパーコンピューターでは1万年かかるとされている問題は、悲観的に見積もっても2日半あれば解くことが可能だと主張しました。

ただ、IBMの主張を考慮しても、計算に必要な素子数に対する時間効率という点では、Googleの研究成果は大きな飛躍であると言えるでしょう。同社は今後、研究成果を補強するためにさらなる追試を行うものと考えられますが、反論したIBMも独自の量子コンピューターの開発を行っています。2020年代は量子コンピューティングの研究が大きく前進する時代になるかもしれません。

<References>
Quantum supremacy using a programmable superconducting processor

https://www.nature.com/articles/s41586-019-1666-5

Googleが量子超越を達成 -新たな時代の幕開けへ
https://www.qmedia.jp/google-supremacy-1/

「量子計算機が古典計算機より優れている」とはどういうことか
https://www.qmedia.jp/computational-complexity-and-quantum-computer/

グーグル量子コンピューターの本当のすごみ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53859730W9A221C1000000/?n_cid=SNSTW002

 

腸内細菌をターゲットにした小児栄養失調の治療法

途上国や貧困国における小児栄養失調の治療現場では、十分な栄養を与えても慢性的な栄養欠乏症状が継続して発育不良などを引き起こす問題が知られています。ワシントン大学セントルイス校の研究グループは今年、そのような栄養失調児童の予後不良を回避するためには腸内細菌叢の正常化が重要であることを実証しました。

研究グループは、バングラデシュ国内の0歳から5歳の乳幼児を対象として、正常な腸内に存在している主要な15種類の細菌と、栄養失調から回復したことを示す血中マーカーを同定。食品の組み合わせによってターゲットとした腸内細菌や血中マーカーがどのように変化するかを、マウス、ブタ、最後にヒトを対象として分析しました。

その結果、ミルクや米といった標準的に配合されている食材では腸内細菌叢の回復にほとんど寄与が見られなかった一方で、ヒヨコ豆やバナナ、ピーナッツなど植物性タンパク質を豊富に含む食材では、回復を示す血中マーカーのレベルが優位に上昇したと報告しています。

今回実施された試験は被験者63名という比較的小規模だったものの、現在は規模を拡大した試験をバングラデシュ国内の2箇所で実施中とのこと。

「単純に不足している栄養を与える」という従来の栄養補給法から「腸内細菌叢を正常化させるために必要な栄養を与える」という新たなコンセプトの開拓につながる極めて重要な研究成果ですが、今後の続報が期待されます。

<References>
A sparse covarying unit that describes healthy and impaired human gut microbiota development

https://science.sciencemag.org/content/365/6449/eaau4735

For malnourished children, new therapeutic food boosts gut microbes, healthy development
https://medicine.wustl.edu/news/for-malnourished-children-new-type-of-therapy-boosts-gut-microbes-healthy-development/

 

史上最大の絶滅、その最初の日に何が起こったか

およそ6500万年前、メキシコのユカタン半島に巨大な小惑星が衝突し、地球上の生物の75%が絶滅しました。その衝突跡は、直径193kmのチクシュルーブ・クレーターとして現在に姿を残しています。

このチクシュルーブ・クレーターに落下した小惑星が大量絶滅の引き金になったことは多くの研究結果が示していますが、具体的にどのようなことが起こっていたかについては、様々な説があります。テキサス大学の研究グループは、ボーリングによってチクシュルーブ・クレーター内の堆積物を詳細に分析するとともに、コンピューター・シミュレーションを行うことで、大災害のその日に起こったシナリオを導き出しました。

2019年9月に米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された論文では、衝突直後の様子として以下のように記述しています。

・衝突によって深さ30kmに及ぶクレーターが生じ、同時に高さ数百メートルの巨大津波が発生。この津波は現在のアメリカ中西部イリノイ州にまで到達。

・衝突から数分、爆発にによって巻き上げられた岩石はクレーター内にエベレストよりも高い山体を形成。この山体は数分後にクレーター外側に向かって崩壊し、ピークリングと呼ばれる円状の隆起構造を形成。

・数十分後、形成されたピークリング上に衝突で巻き上げられた岩石や融解した岩石が厚さ40メートルにわたって堆積。

・衝突から1日後、巨大津波の引き波が運んできた岩石や土壌がさらに積み重なり、厚さ130メートルに及ぶ地層を形成。この地層には木炭が大量に含まれていたことから、衝突によって大規模な火災が発生したものと考えられる。

さらに、チクシュルーブ・クレーター周辺の岩石は硫黄を豊富に含んでいるにも関わらず、クレーター内部からは硫黄成分がほとんど検出されなかったとのこと。このことから論文では、小惑星の衝突によってクレーター地点にあった岩石が蒸発して硫酸塩エアロゾルを生成し、それが雲となって日光を遮ったことで全球規模の大量絶滅を引き起こしたと述べています。衝突によって大気中に放出された硫黄は少なくとも3250億トンと見積もられるとのこと。

生成した硫酸塩エアロゾルは日光を遮るだけではなく、海水に溶け込むことで地球全体の海洋を急激に酸性化。同時に、大気中の硫酸塩は硫酸の雨を降らせて生物の生命活動に甚大な影響を及ぼしました。

巨大小惑星の衝突によって大量絶滅が起こったとする説はこれまでにも提唱されていますが、実際にクレーター内の堆積物を分析してその裏付けを行ったという点で、大きな成果と言えるでしょう。

<References>
The first day of the Cenozoic

https://www.pnas.org/content/116/39/19342

Rocks at asteroid impact site record first day of dinosaur extinction
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-09/uota-raa090419.php

Scientists gear up to drill into ‘ground zero’ of the impact that killed the dinosaurs
https://www.sciencemag.org/news/2016/03/scientists-gear-drill-ground-zero-impact-killed-dinosaurs

 

「最遠の天体」を詳細観察

太陽系の最も外側を公転している海王星や冥王星のさらに先には「カイパーベルト」と呼ばれる領域が広がっており、宇宙探査機が直接観測した地球から最も遠い天体 “Arrokoth (識別名称2014 MU69)” はその中に存在しています。

2014年に発見されたばかりこの小天体は、微惑星が2つ繋がった雪だるまのような形状をしており、太陽のまわりを298年周期で公転しているとされています。2018年末にはNASAの探査機「ニューホライズンズ」の延長ミッションの対象天体に選ばれ、翌2019年1月には3500kmの距離からフライバイ観測が実施されました。

このフライバイの際に取得された全データの送信は2020年9月に完了する予定となっており、それらのデータ分析からカイパーベルト天体の形成過程や地質学的特徴に関する多くの知見が得られるものと期待されています。

<References>
Far, Far Away in the Sky: New Horizons Kuiper Belt Flyby Object Officially Named ‘Arrokoth’

https://www.nasa.gov/feature/far-far-away-in-the-sky-new-horizons-kuiper-belt-flyby-object-officially-named-arrokoth

 

第3の生物「アーキア」の人工培養に成功

地球上の全ての生物は、人間や動物・植物などの「真核生物」と大腸菌などの微生物をはじめとする「原核生物」の2つに分類され、原核生物はさらに「真正細菌」と「古細菌(アーキア)」に区分されます。真核生物は原核生物から進化したものと考えられていますが、長い間その中間過程にあたる存在が明らかになっておらず、進化生物学におけるミッシングリンクの一つとされていました。

近年、遺伝子解析技術の発達により、古細菌(アーキア)が進化学的に真核生物に近いことが明らかになってきており、特に2010年頃からは「アスガルド古細菌」という微生物が、真核生物と原核生物とを繋ぐ存在として注目を集めています。

このアスガルド古細菌のDNAを調べれば、生物の進化過程について多くの謎が解明されるものと期待されます。実際、自然界から採取されたアスガルド古細菌のDNA断片を調べた研究が多数報告されていますが、この種の古細菌は人工培養に成功した例がなく、網羅的なDNA解析が行われていませんでした。

2019年、日本の海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究グループが12年間をかけたアスガルド古細菌「プロメテオアルカエウム・シュントロピクム (Candidatus Prometheoarchaeum syntrophicum) 」の培養および全ゲノム解析に成功。Nature誌に掲載された論文では、この古細菌が真核生物と共通する遺伝的特徴を多数備えていること、また特定の真正細菌(大腸菌のような、いわゆる一般的に細菌と呼ばれる微生物群)と共生させることで最もよい生育結果がもたらされると報告しています。

この研究結果は、進化系統的に異なる生物である真正細菌と古細菌とが協調する形で真核生物へと進化していった可能性を強く示唆するものです。古細菌の人工培養が可能になったことで、これまで取り残されていた生命進化における多くの謎が明らかになっていくかもしれません。

<References>
Isolation of an archaeon at the prokaryote-eukaryote interface
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/726976v1

Scientists glimpse oddball microbe that could help explain rise of complex life
https://www.nature.com/articles/d41586-019-02430-w

真核生物の起源を暗示するアーキアの培養に成功!
https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v16/n11/%E7%9C%9F%E6%A0%B8%E7%94%9F%E7%89%A9%E3%81%AE%E8%B5%B7%E6%BA%90%E3%82%92%E6%9A%97%E7%A4%BA%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%82%A2%E3%81%AE%E5%9F%B9%E9%A4%8A%E3%81%AB%E6%88%90%E5%8A%9F%EF%BC%81/100882

 

嚢胞性線維症の新たな治療薬

嚢胞性線維症(cystic fibrosis, 以降はCFと表記)は白人で発病率が高い遺伝性疾患で、気道や消化管など全身の組織から分泌される粘液の粘度が異常に高くなることで様々な疾患を引き起こす病気です。

2019年10月、アメリカ食品医薬品局(FDA)は新たな3剤併用型のCF治療薬 “Trikafta” を承認しました。この薬は、CF患者の90%がもつ遺伝子変異をターゲットにしたもので、既存の2剤併用型治療薬と比較した有効性が確認されています。

現在Trikaftaの投与対象は12歳以上の患者に限定されており、今後はさらに若い児童への適用を目指すとのこと。しかし、年間の薬価が30万ドルと非常に高額なことが目下の課題となっています。

<References>
FDA approves new breakthrough therapy for cystic fibrosis

https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-new-breakthrough-therapy-cystic-fibrosis

嚢胞性線維症 (難病情報センター)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4531

 

劇的に向上したエボラ出血熱の生存率

https://sdc.gov.jm/ebola-virus-fact-sheet/

2014年にギアナなどの西アフリカ地域で発生した大流行をきっかけに、エボラ出血熱の治療方法はここ数年で急速に改良が進んでいます。かつてエイズと並ぶ極めて高い致死率を記録していたエボラは致死の病から「治る病気」へと変わりつつあります。

2019年にアメリカ国立衛生研究所(NIH)がコンゴで行った臨床試験では、従来使われていた主な薬剤 “ZMapp” と “Remdesivir” に加えて新たに “MAb114” “REGN-EB3” を導入したランダム化比較試験を実施。その結果、2種類の既存薬に比べて新規2薬によって投与から28日経過時点での死亡率(28日死亡率)が有意に低下しました。

従来薬の一つであるZmappでは28日死亡率が49.7%であったのに対して、新規薬のMAb114が35.1%、REGN-EB3では33.3%まで低下。加えて、感染後すぐに治療を受けたグループでは、MAb114が10%、REGN-EB3では11%にまで死亡率が低下したとのことです。

NIHでは今後、比較的に死亡率が高かったZMappとRemdesivirを試験の対象薬から除外し、MAb114と REGN-EB3の2薬を中心に試験を行っていくとしています。

<References>
Investigational Drugs Reduce Risk of Death from Ebola Virus Disease
https://www.nih.gov/news-events/news-releases/investigational-drugs-reduce-risk-death-ebola-virus-disease

Independent Monitoring Board Recommends Early Termination of Ebola Therapeutics Trial in DRC Because of Favorable Results with Two of Four Candidates
https://www.niaid.nih.gov/news-events/independent-monitoring-board-recommends-early-termination-ebola-therapeutics-trial-drc

 

複数人ポーカーでAIが人間に圧勝

相手の状況や行動をプレイヤー同士で追跡可能な将棋や碁などのゲームは「完全情報ゲーム」、手の内や戦略の追跡が困難な麻雀やポーカーは「不完全情報ゲーム」と呼ばれています。特にポーカーは「ブラフ」などのテクニックの存在によって持ち手の強さがゲームの勝敗に直結しない、高度な駆け引きが求められるゲームです。

こうした特徴から、AIがポーカーで人間に勝つのは難しいと考えられていました。しかし、2017年にFacebook AI ResearchのNoam Brownらが開発したAI “Libratus” が2人対戦形式のポーカーでトッププロ4人に勝利したことで、AIは複雑な駆け引きを伴う不完全情報ゲームにも対応可能であることが示されたのです。

2019年、Noamらが新たに開発したAI “Pluribus (プルリブス) ” は、カジノなどで採用されているテキサス・ホールデムルールのポーカーを6人対戦(AIプレイヤー1対人間プレイヤー5、AIプレイヤー 5対人間プレイヤー1の2種構成)でのべ1万5000ゲームをプレイ。その結果、AIがトッププロを含む人間側プレイヤーに圧勝しました。

ポーカーは人数が増えるほど複雑性が増すゲームです。プレイヤーの数だけ選択肢は増加し、ブラフのかけ方やタイミングも人により異なります。そのような予測困難な状況下においても人間を超えるAIの出現は、コンピューター科学史における巨大なマイルストーンと言えるでしょう。

Pluribusにおけるもう一つの衝撃は、最先端AIのシステム要件を大きく引き下げたことです。Googleなどが開発した囲碁プログラム “Alpha GO” システムではのべ1200個以上のCPUが使われていましたが、Pluribusはわずか64個のCPUで稼働しています。

不完全情報ゲームの攻略は、自動運転やITセキュリティ技術、ひいては外交政治や戦争にまで影響を及ぼします。実際、Noamと共同でPluribusを開発したカーネギー・メロン大学のTuomas Sandholmは、すでに研究成果をコンピューターゲームのAIボットや国防などの分野で商業化するための企業を立ち上げています。

ポーカーに勝つAIの恩恵を日常生活で直接感じることはないかもしれませんが、AIの社会進出はすでに想像を超える領域にまで及んでいるのかもしれません。

<References>
Superhuman AI for multiplayer poker

https://science.sciencemag.org/content/365/6456/885

Facebook, Carnegie Mellon build first AI that beats pros in 6-player poker
https://ai.facebook.com/blog/pluribus-first-ai-to-beat-pros-in-6-player-poker/

A Poker-Playing Robot Goes to Work for the Pentagon
https://www.wired.com/story/poker-playing-robot-goes-to-pentagon/

6人プレイのポーカーでAIがプロに勝利
https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v16/n10/6%E4%BA%BA%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%81%AE%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%81%A7AI%E3%81%8C%E3%83%97%E3%83%AD%E3%81%AB%E5%8B%9D%E5%88%A9/100397

AIにとって、ポーカーがチェスや囲碁より難しいのはなぜですか? (Quora)
https://jp.quora.com/AI%E3%81%AB%E3%81%A8%E3%81%A3%E3%81%A6-%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%81%8C%E3%83%81%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%82%84%E5%9B%B2%E7%A2%81%E3%82%88%E3%82%8A%E9%9B%A3%E3%81%97%E3%81%84%E3%81%AE%E3%81%AF%E3%81%AA

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。