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【超訳】最高精度での陽子質量測定(Max Plank研究所リリースより)

この記事は、以下のリリースの超訳です。「陽子の質量を精度めっちゃ上げて測定したら今使われてる数字より低かったんだけど」という感じの内容です。削ぎ落としと表現変えはフィーリングベースなので間違っている所がありましたらツッコミ頂けるとありがたいです。

The proton precisely weighted
https://www.mpi-hd.mpg.de/mpi/en/start/
https://idw-online.de/de/news678460

High-Precision Measurement of the Proton’s Atomic Mass (Physical Review Letters)
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.119.033001

 

陽子の質量とは何なのだろうか?ドイツと日本の科学者は、この基礎定数について最も正確な知見を得る上で重要な研究成果を発表した。単一陽子の精密測定という意味において、彼らは従来の3倍の精度を達成しており、同時にその結果は既存の数値を訂正し得るものである。

単一陽子の質量決定手法にはいまだ改良の余地がある ―マックス・プランク核物理学研究所(ドイツ、ハイデルベルグ)のKlaus BlaumとSven Sturmはこれを実証し、新しい記録を打ち立てた。陽子は水素原子の核であり、あらゆる原子の原子核の構成要素である。それゆえ、陽子の質量は原子物理学において重要なパラメーターとなるが、特に原子核の周囲をまわっている電子の運動に与える影響は重要である。これはスペクトル、すなわち原子が吸収・放射する光の色(波長)にも現れる。これらの光の波長を理論的予測と比較することで、基礎物理学の理論を検証することが可能になる。

さらに、陽子の質量と反陽子の質量をより高い精度で比較することは、物質と反物質の決定的な差異を追求する研究にも重要な知見を与える。ビッグバンにおいて等量の物質と反物質が作り出されたにも関わらず、現在の宇宙がほぼ物質のみで構成されているのは、両者の間に、非常に小さいが確実に存在している何らかの差異が原因という訳である。

ペニング・トラップは、イオンの「はかり」として科学研究の場で広く用いられている。このようなトラップでは、電場や磁場をかけることで陽子のような単一の正電荷粒子をほぼ永続的に閉じ込めておくことが可能である。トラップの内部では、捕らえられた粒子は3つの周波数によって記述される特徴的な振る舞いを示し、それらの周波数を測定することで陽子の質量は算出される。

炭素の同位体であるC12は原子の質量の基準として定義されている。「我々はC12を直接の比較対象として使用した。まず、陽子一つとイオン化したC12((12C6+) をペニング・トラップ装置内の別々の区画に入れ、それらを装置の測定部へ交互に送り出して両者の運動を測定した。両者の値の比から、原子の中の陽子の質量を得ることが可能になる。」と、Sven Sturmは語る。日本の理化学研究所のAndreas Mooserの説明によると、この装置の測定部は特別に開発されたもので、質量で12倍、電荷では6倍の開きがある陽子と炭素イオンを同一条件下で測定することが可能となっている。

測定の結果得られた陽子の質量(1.007276466583原子質量単位)は、現在広く使われている値に比べて3倍の精度を達成しているが、この新たな測定値は、現在の基準値に比べて有意に小さい。

ペニングトラップを使った実験では、すでに(質量数が同じ)三重水素とヘリウム3で精密測定した質量が一致しないことが報告されているが、今回の研究成果はその謎を解くための鍵になるだろうとKlaus Blaumは語った。

マックス・プランク研究所のFlorian Köhler-Langesは、さらなる測定精度の向上について「今後は、レファレンスの役割を担う3つ目のイオンをトラップ内に保存することができるよう装置系を改良し、炭素イオン・陽子と同時にこの新たなイオンの運動を測定することで、磁場のゆらぎによる不確実性を排除することが可能になるだろう」と述べている。

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